納豆は日本が誇る和食文化を代表する伝統食品であることは明らかです。
しかし、日本独自の食品かというと少しちがいます。
実は納豆に似た食品が東アジア、東南アジア、ヒマラヤ地域など、日本以外でも伝統的に作り、食べられてきた食品でもあるのです。
日本のほかに納豆文化が根付く国は、タイ、ネパール、ベトナム、ミャンマー、ブータン、韓国、中国などです。これらの国々の内陸部の盆地や山岳地帯が納豆文化のおもな継承地です。
同じ国の中でも海の幸が豊富な沿岸地域では、「納豆など作らないし、食べたことも見たこともない」ということが多く、そうした地域では魚醤のような秀逸なうまみ調味料に事欠きません。なるほど、納豆の文化の項に記したとおり、納豆はうまみ調味料と考えられます。
また、納豆文化を継承する地域を国境で線引きするのは、じつは困難です。
なぜならヒマラヤ山脈周辺の地域は、国の線引きでは分けきれない少数民族が多数存在し、それぞれに風習や食文化が違うからです。納豆も例外ではなく、食べるか食べないか、作るか作らないか、また、作るにしてもどんな植物から納豆菌を供給するかなど、民族ごとに異なります。納豆の呼び名ひとつとっても、民族あるいは地域ごとに25種類以上あるのです。
アジアの納豆の共通点はただひとつ、原料が大豆だということです。