納豆菌が醸す

大豆は納豆菌の働きにより、“醸す”という美しい響きの工程を経て、納豆へと姿を変えます。醸す=発酵の主役・納豆菌は、枯草菌という微生物のひとつです。目に見えない小さい生きもの・微生物は、細菌、真菌、原生動物、藻類など形や性質にちがいのあるものが、地球上におよそ300万種存在するといわれています。※発酵のきほん(舘博監修 誠文堂新光社)
枯草菌は細菌に属する微生物で、そのうち納豆らしい香気と糸引きを生成する亜種を納豆菌とよんでいます。
枯草菌自体は土壌や空気中など、どこにでもいる細菌で、生態系においては動物や植物を分解し、土や大気にかえす役割を担っています。
学名
枯草菌:バチルス・サブチリスBacills subtiris
納豆菌:バチルス・サブチリス・ナットーBacills subtilis (natto)
“分解”は納豆を醸すうえでのキーワードでもあります。
納豆菌は大豆のたんぱく質や糖質などを、自らが生成して分泌する酵素で分解し、取り込みながら増えていきます。分解する際の副産物として、ビタミン類や香りの素、糸引きなどが醸し出され、また、大豆の成分は消化吸収しやすいかたちに変わります。
これら一連の働きを、納豆菌は自分たちの生命活動として行っていますが、私たちはそれを「発酵」とよび、ありがたく享受しているわけです。